2022年に発売されたポケットモンスター最新作『Pokémon LEGENDS アルセウス』。皆さんはもう遊ばれたでしょうか?
自分もポケモンシリーズはほぼ全て遊んでいるポケモンラバーなのですが、本作も本当に……!物語世界観ゲームシステムゲーム音楽、全てを取っても本当に素晴らしい作品でした🥺
本作の舞台となるのは『ヒスイ地方』。2006年に発売された『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』(もといプラチナ)で登場するシンオウ地方の前身となる地方……と言われています。
ダイパが元々ポケモン10周年を記念して作られたもので、今振り返ってみるとかなり肝いりの作品だったのかなと思いつつ、神秘的で少し不思議なシンオウ地方の物語は、ポケモンシリーズにおいても高い人気を誇っています。
それを引き継ぐような形で紡がれたヒスイ地方での物語。
ゲームソフト発売前からSNSなどでも色々と考察がなされていましたが、実際に「今のここってあのシリーズのこのシーン(このキャラ)」と繋がっているのでは…!?などなど、色々考えたくなる部分が数多くありました。
ちょうどゲームをクリアしたこともあり、今回は改めてアルセウスの物語を(現実の歴史的史料を参照しながら)個人的に色々と考察してみたいと思います。
本作の舞台はいつなのか
舞台は江戸時代末期?
ポケモン史上初とも言える、『過去』を舞台にした本作。キービジュアルを見ただけで、和風な世界観が伝わりますね。個人的にもアルセウスの情報が初めて公開となったニンダイ(確か)での衝撃は忘れられません。
作品HPに『はるか昔のポケモンの世界へようこそ』とある通り、本作が一般的なポケモンシリーズよりも前の作品であることは間違いないようです。
でも!
それなら!!
いつなのか!!!
ということで、個人的に調べたいなと思ったのが北海道の歴史です。
かつて東京が江戸と呼ばれていたように、北海道も蝦夷(えぞ)という名前で呼ばれていた時代がありました。北海道へと改称がなされたのは1869年。箱館戦争が終結した後の明治時代初期となります。
仮にヒスイを蝦夷、シンオウを北海道とした時に、単純に日本史の年表だけで考えると、本作はまだ『ヒスイ地方』なので明治以前、結論から言えば江戸時代末期あたりが濃厚なのかなと個人的には思いました。
ヒスイ地方の時間軸(時代)を推察する上でのポイント
もちろん実際の日本史とポケモン史(!)は全く異なりますし、同じものと考えるのはNG。
一方で日本の歴史と照らし合わせると共通しそうな部分もいくつかあり、比べてみるとなかなか面白いのも確かです。
先述した『江戸時代末期あたり説』を検証するものとして、以下の要素も本作の舞台を推測する上でのキーポイントとなりそうです。
①ギンガ団本部の建物が洋風である
コトブキムラのシンボルとも言えるギンガ団の立派な建物は、明治時代を彷彿とさせるレンガ造りの近代的な建築です。
主人公の住居を始め一般的な建物は伝統的な平屋建てになっていますが、前述の本部が洋風建築であることから、ある程度近代化が進んでいる証拠とも言えそうです。
②一般人の服装が和装である
主人公をはじめ、一般人の服装は基本的に和装である点も興味深いですね。
ヒナツやツバキなどキャラクターデザインとして現代的な服装をしているメインキャラは何名かいましたが、一般的な『洋装』をしているキャラはほとんどおらず……
中でも、デンボクさんの和装&甲冑!はまさにサムライを彷彿とさせて印象的でした。
一般人における和装の文化は昭和時代まで続くのであまり参考にはならないかもですが、一般的には和装(着物)を着る文化が根付いているということで、ヒスイの時代を定義づけることはできそうです。
そう考えるとコギトさんはめちゃくちゃ不思議ですよね…(小声)
③海外出身者が珍しい存在である
本作に登場するラベン博士。やや頼りないながらも最初から最後まで主人公を信じ続け、さらには未開の地で図鑑を完成させようとする情熱が印象的でした。
ヒスイでは『学者先生』とも称されているラベン博士ですが、作品内でアローラとの関係を匂わせる発言をしていました(ライドポケモンについての言及)。
そう考えると洋装かつアローラと関係があるラベン博士が本作においてやや浮いた存在として見えるのは、少なからず当時の時代背景と関係がありそうです。
④デンボクの発言
個人的に大変興味深かったのは、物語ラストでのデンボクの発言でした。
「うむう この地はヒスイ地方ではなく シンオウ地方と称すべきかもな」
物語のキーとなる「シンオウ」というワード。漢字では「神奥」と書くそうですが、コンゴウ団とシンジュ団によってディアルガとパルキアが「シンオウさま」という名前で祀られていたことが明らかになっています。
その「シンオウ」の名前を取り、新たな地方の名前にしたら良いのではないかと話したデンボクさん。廃藩置県でも大政奉還でも開国でもなく、それぞれの出自や立場も乗り越えて、この地に暮らす全ての人が一つになれるような未来を予感させるラストの発言に、妙にグッと来てしまいました。
この発言から何年後にヒスイがシンオウと言う名前に変わったのかは明らかではありませんが、事実としてダイパではシンオウ地方になっています。
うーん……神作ですね……(結局何を言いたかったのやら)
ポケレジェからダイパの間に何があったのか
ヒスイからシンオウへの繋がりとして、もう一つ気になるのが本作『Pokémon LEGENDS アルセウス』から『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』の間に一体何があったのかという点。
先ほど述べたように、アルセウスの舞台をおおよそ1868年頃だと仮定するとダイパが発売されたのが2006年。もちろん「ダイパの時系列=2006年」というソースはないのでただの単純計算にはなりますが、約140年ほどの間があることになります。
そして、(何度も何度も注釈を挟むようで恐縮ですが…)大前提として覚えておきたいのが「必ずしもアルセウスの世界がそのままダイパに繋がっている」訳ではない点。
ポケモンの時系列をハード(ゲームボーイかDSか3DSかなど)で区切っている考察を拝見したことがありますが、ルビサファとリメイク(ORAS)がパラレルワールドだと考えられる旨もファンの間では有名ではと思われます。
そのためアルセウス⇒ダイパ(の世界線)と決めつけてしまうのはちょっとアレですし、個人的には先述した(シンオウに繋がって行くような)デンボクの発言はあれど、これがダイパへ続いて行くのか……とややしょんぼりしてしまう要素もぶっちゃけあるのが正直なところです(エンディングまでプレイされた方の中にはもしかしたら同じ感情を抱いた方もいらっしゃるかもしれません)。
アルセウスはアルセウス、ダイパはダイパとそれぞれ独立したゲームとして楽しむのが本来の作品の楽しみ方なんじゃないかなぁと思いつつ、せっかくなので【アルセウスでの世界がダイパへ繋がることを仮定した場合のシンオウやメインキャラの移り変わり】を少し考えてみたいと思います。
※何度もしつこくてすみませんが、これはただの1ファンによる妄想なのでご容赦ください…。
※こちらもネタバレを含みますので、閲覧の際はご注意ください。
①ギンガ団の方向転換(もしくは消滅)
本作で特に衝撃的だったのは、『ギンガ団がクリーンな(善良な)集団』さらには『主人公や博士がギンガ団に所属していた』ことではないでしょうか。
ダイパで遊んだことがある、もしくはアニメを見ていた方にとってはギンガ団の悪行は十分ご存知なはずです。ギンガ団推しもしくは団員の方も本記事を読んでいらっしゃるかもしれませんが、リッシこを爆発させてコイキングが力なくぴちぴちしてるところだって見たことがあるはずです。
そんなギンガ団が、ヒスイ時代はカントーから北の広大な大地と夢を追い求めてやって来た集団だった。言い換えれば、ダイパまでの(約140年?)の間に、どこかで方針転換(と言う名の迷走)が起きたことになります。
もちろんパラレルワールドの可能性を抜きにしてもアルセウスのギンガ団=ダイパのギンガ団とも言い切れないのが事実です。
となるとアルセウスのギンガ団はダイパまでの間に消滅したことになり、ダイパのギンガ団はアルセウスの名前を拝借したことになりますが、そうなるとやや気になって来るのがアカギとシマボシの関係性。
デンボクとナナカマド博士のように明記はされていませんが、アカギとシマボシの外見が似ている点はかねてより指摘されていました。となるとギンガ団はアカギの時代まで続いたか、一度消滅したものを(末裔である)アカギが継いだ、といった考え方もできそうです。
一方で、ギンガ団の団長であるデンボクの子孫であるナナカマド博士はお分かりの通りギンガ団には所属していません。となるとデンボクの家系はどこかでギンガ団を抜けたか、そもそもギンガ団自体が一度解体した可能性が考えられそうです。
②シンジュ団・コンゴウ団の消滅
二つの「シンオウさま」を祀る2つの組織(シンジュ団とコンゴウ団)も本作では非常に魅力的な存在でした。彼等の信仰文化や外見からモデルは言わずもがなアイヌであると考えられますが、残念ながらダイパで2つの集団の名を聞くことはありませんでした。
よってこの2つはアルセウスでの初出、つまりはダイパの時代には無くなっている(もしくは縮小している)可能性があります。とてもとても悲しい。
以下は余談ですが、個人的にアイヌについてはこれまで(北海道に住んでいないこともあり…)ほとんど知識がありませんでした。今回のアルセウスをきっかけに興味を持ち、色々と調べるうちに北海道に行きたい欲がムクムクと…。今一番訪れたい場所はウポポイです。
実在する(した)アイヌの文化はアルセウスにおけるシンジュ団・コンゴウ団と共通する部分も多々ありました。
・交易は物々交換が主ある点(そう言えばバトルで勝ってもお金もらえなかった気がする)
・衣服などに独特の文様を使用する点(これはキャラクターデザインなどからも明らかですね)
尚、pixiv百科事典ではシンジュ団の長であるカイについて、「名前の由来はおそらくウルシ科の落葉高木カイノキ。または派閥名と併せて真珠貝から。」とありましたが、アイヌ語では「その土地に住む人」という意味もあるそうです(北海道を命名した松浦武四郎のwikiより/そう言えば「ほっ『カイ』どう」ですね……)。
③イチョウ商会の消滅
シンジュ団・コンゴウ団と同じく、ウォロが所属していたイチョウ商会もダイパには登場しません。
ウォロとシロナの関係性を考えるとイチョウ商会(もしくはウォロ)は古代シンオウ人の集団であるとも考えられます。
そもそもイチョウ商会のような商売形態は現代にはそぐわないので商会の人々の暮らしはヒスイ以後で徐々に変わって行ったと考えるのが自然かもしれません。シンオウ内のフレンドリィショップ経営してるのがイチョウ商会の末裔とかだったらめちゃくちゃ面白い
イチョウ商会のリーダーであるギンナンとダイパのジムリーダーであるデンジの関係性も色々と言われていますが、時代の変化に伴い徐々に(ナギサシティに?)定住するようになったとも妄想できますね。
話がそれますが、個人的にはゲームクリア後「コンゴウ団」「シンジュ団」「古代シンオウ人」の三者の関係がいまいちイメージできずにいました。
日本の実話と話が混ざってしまいますが、北海道の先住民族がアイヌであるというイメージが強かったからです。コンゴウ団とシンジュ団を例えばアイヌと定義付けるのであれば、じゃあウォロやコギトのような「古代シンオウ人」とは一体何者なのか…?という感じ。
もしかすると「古代人」についてはポケモンオリジナルの設定なのかもしれないと思いつつ(そもそもコンゴウとシンジュについてもアイヌがモデルであるとは限らない)、色々調べてみるとアイヌ文化が成立したのは13世紀であり、それ以前は(擦文文化、オホーツク文化、トビニタイ文化などの)別の文化があったようです。初めて聞く言葉ばかりで頭がパンクしそうですが、これを踏まえると「古代シンオウ人」は「コンゴウ・シンジュ以前の文化を継承する民族(超ざっくり言ってしまえば両者の系譜を辿らなかった少数民族)」ということになる……?
初見の自分にはやや難し過ぎる話なので、また情報等整理したら加筆修正させていただきます…(´・ω・`)
ダイパキャラの先祖(?)はどんな人生を歩んだのか
ここまで随分話が長くなってしまいましたが、最後にアルセウスに登場したキャラ達は(ダイパに至るまで)どんな道を歩んだのかを考察して終わりにしたいと思います。
現時点で公式によって明らかにされているのはデンボクさんとナナカマド博士のみ。
ですが外見からしてダイパのキャラと似たビジュアルをしているキャラクターがおり、SNSなどでは積極的に考察が行われています。そしてその数がかなり多い。ゲンさんとルカリオを始め、アルセウスではモブと言えるような立場でも各所に「あのキャラダイパの…!?」とハッとさせられるようなキャラが数多くいました。
キャラクターによっては特定の子孫が定まらないキャラも多く本記事も考察の域を出ませんが、あくまで個人的に「このキャラ多分…」と思ったキャラクターをかいつまんで考えを巡らせてみたいと思います。
①ヒナツ、オウメ、タイサイ(の子孫?)がギンガ団に所属
コンゴウ団のヒナツと野盗三姉妹のオウメはどこからどう見てもギンガ団のマーズとサターンに似ていました。
個人的には外見だけで先祖だ!と言いきってしまうのはちょっとな~~とも思いつつ、2人は一目でわかるほど似ているので何らかのルーツがありそうです。
二人に比べるとちょっと影が薄くなってしまいますが、コトブキムラにいるタイサイもダイパのギンガ団のプルートに良く似ています。
そうなると、
・オウメ⇒何がしかのタイミングでギンガ団へ
・タイサイ⇒何がしかのタイミングでギンガ団へ
②デンボク、サザンカ、ペリーラ(の子孫?)がギンガ団を脱退
ヒナツ達(の家系)がギンガ団に入ったのに対し、アルセウスの時点でギンガ団に入団していたデンボク、サザンカ(後のカリン?)、ペリーラ(後のオーバ?)の三人は何がしかのタイミングでギンガ団を抜けたことになります。
デンボクは言わずもがな、サザンカとペリーラもだいぶ似たキャラがいますよね……。この三人については後にポケモン博士、四天王、(シンオウの)ジムリーダーとなっているので、道のりとしては真っ当なような気がします。
③コギトの謎
最後にどうしても考えたいのがコギトの謎。
ウォロとシロナで何らかの関係性があるのは揺るがない事実だと思いますが、コギトもコギトでシロナとの共通点がいくつかあり謎は深まるばかりです。
・落ち着いた性格
・年齢不詳であること
・自らの祖先にまつわる発言(ウォロと同じく古代シンオウ人?)
界隈では「コギトはシロナのおばあちゃん」説も出てましたね。シロナのおばあちゃんはダイパで既に登場していました。
私もコギトを見た瞬間「これは…あの時の……!」と思いましたが、前述したようにアルセウスからダイパは(単純計算で言えば)140年くらいの間があるので、そうなるとコギトをシロナの祖母だと定義すると160歳以上になってしまいそうです(笑) ただコギトさんは(シロナさんと同じく)だいぶ年齢不詳なので、可能性は全然あるんじゃないかなと思ったり。
個人的には「古代シンオウ人」を彷彿とさせているにも関わらず、洋装かつ比較的おしゃれ(近代的?)な暮らしをしていること。家の外にティーポットがあったのも少し気になりました。
これは個人の妄想に過ぎませんが、主人公やノボリと同じく別の時間軸から来た説もあるのでは……と思ってしまったり。
結局本作ではコギトの謎については一切明かされないままでしたが、DLCでの何らかの続編がありそうな気もしています。
おわりに
長々と語ってしまいましたが、本記事では『Pokémon LEGENDS アルセウス』をプレイした上で気になった作品の世界観について、歴史的史料を交えながら整理させていただきました。
ヒスイを取り巻く世界について色々と考えるとややこしさと沼の深さに溺れてしまいそうになりますが、本当に本作はポケモンの歴史に名を残す名作だったと思います。
様々なレビューにもありましたが、『ポケモンはかわいい』『ポケモンと人間は仲良く共生している』そんなポケモンにおける一般常識と真っ向から向き合い、ある意味でタブーとも言える領域まで踏み込んだ本作。
私自身大好きなポケモンの存在をこれほどまでに【怖い】と思ったのは初めてでしたし、だからこそ本記事を勢いのままに書きたくなるほど考えさせられる作品でした。
3DSやSwitchになってからしばらくポケモンはご無沙汰だった方も、一度もポケモンをプレイしたことがない方も、16年前のダイヤモンド・パールをプレイしたことがない方も。ぜひ遊んでみて欲しいと思います。むしろなぞのばしょで記憶消せるなら自分だってアルセウス⇒ダイパの流れを体験してみたい~~~~!!!!!ウオオ~~~!!!😂😂😂😂
ということで、1ファンの妄想に過ぎない本記事ではありましたが、アルセウスの世界をさらに楽しむ一助となれば幸いです!
参考文献
・北海道観光振興機構ホームページ
・ウポポイ公式ホームページ
・Wikipedia(アイヌ)
・Wikipedia(松浦武四郎)
・Wikipedia(アイヌ史の時代区分)